監査役制度

監査役制度について

2.監査役の職責

POINT
監査役は、取締役会と協働して会社の監督機能の一翼を担い、株主の負託を受けた独立の機関として、取締役の職務の執行を監査することにより、良質な企業統治体制を確立する責務を負っています。
監査役の「心構え」として、独立の立場、公正不偏の態度、自らの信念に基づく行動、監査品質向上のための自己研鑽などが求められます。
コーポレートガバナンス・コードでは、能動的・積極的に権限を行使し、取締役会においてあるいは経営陣に対して適切に意見を述べるべきであるとされています。

(1)監査役の職務・権限・義務

監査役は、株主総会の決議によって選任され、会社の委任を受けた独立の機関です(会329、330)。

監査役は、善良な管理者の注意をもって、その職務を行う義務(善管注意義務)を負い(会330、民法644)、監査役が任務を怠ったときは、それにより会社に生じた損害を賠償する責任(任務懈怠責任)を負います(会423)。

また、監査役は、取締役会その他重要な会議への出席、取締役、使用人及び会計監査人等から受領した報告内容の検証、会社の業務及び財産の状況に関する調査等を行い、取締役又は使用人に対する助言又は勧告等の意見の表明、取締役の行為の差止めなど、必要な措置を適時に講じなければなりません(会381、383、385、397、436)。

監査役がこれら職責を果たすため、取締役からの独立性を担保すべく法令上様々な規定が設けられています。まず、取締役の任期が2年であることに対し、監査役の任期は4年と規定されています(会332、336)。また、監査役の報酬の総額は株主総会で決議され、個別の監査役の報酬は監査役の協議により決定すること、株主総会に提出する監査役の選任議案には監査役の同意が必要であること、そして、監査役の選任・解任・辞任について株主総会での意見陳述権が付与されていることなど、監査役の報酬や選任等のプロセスを経営陣が支配することを防ぎ、監査役の独立性を確保するための措置が講じられています(会387、345)。

これら監査役の権限・義務に関する法令については、関連法令もご参照ください。

「関連法令」

(2)監査役会の設置

会社法上の公開会社である大会社には、監査等委員会設置会社又は指名委員会等設置会社である場合を除き、全ての監査役で組織する監査役会の設置が義務付けられています(会328、390)。監査役会設置会社においては、監査役は、3人以上で、そのうち半数以上は、社外監査役でなければなりません(会335)。また、監査役会は、監査役の中から常勤の監査役を選定しなければならないとされています(会390)。

会社法上、監査役はそれぞれの判断に基づき単独で権限を行使することができ、監査役会の決定も各監査役の権限の行使を妨げることはできないとされています(会390)。これを監査役の「独任制」といいます。一方で、監査役会のメンバー間での効率的な役割分担も望まれます。

(3)責務と心構え

日本監査役協会は、具体的・体系的な実務指針として、「監査役監査基準」を定めています。本基準には、監査役の責務や心構えをはじめとし、法規定等を受けた法的義務を伴う規範や、コーポレート・ガバナンスの観点から望ましい規範について、言わばベストプラクティスとして詳細な規定が定められています(以下、「基準」と略称します)。

監査役は、取締役会と協働して会社の監督機能の一翼を担い、株主の負託を受けた独立の機関として、取締役の職務の執行を監査することにより、良質な企業統治体制を確立する責務を負っています。ここでいう良質な企業統治体制とは、企業及び企業集団が、様々なステークホルダーの利害に配慮するとともに、これらステークホルダーとの協働に努め、健全で持続的な成長と中長期的な企業価値の創出を実現し、社会的信頼に応えることができる体制を指します(基準2、監査役/日本監査役協会の理念、会381)。

また、「心構え」として、独立の立場の保持に努め、公正不偏の態度を保持し、自らの信念に基づき行動すること、監査品質の向上に向け自己研鑽に努めることなどが求められています(基準3)。

【補足】

日本監査役協会では、「監査役の理念」、「日本監査役協会の理念」をそれぞれ定めており、その中においても、「監査役はコーポレート・ガバナンスを担う」あるいは、「監査役の使命を高揚し、良質なコーポレート・ガバナンスの確立をもって、豊かなグローバル社会の実現を目指す」等と定めています。

(4)コーポレートガバナンス・コード

コーポレートガバナンス・コードでは、「監査役及び監査役会に期待される重要な役割・責務には、業務監査・会計監査をはじめとするいわば『守りの機能』があるが、こうした機能を含め、その役割・責務を十分に果たすためには、自らの守備範囲を過度に狭く捉えることは適切でなく、能動的・積極的に権限を行使し、取締役会においてあるいは経営陣に対して適切に意見を述べるべきである」とされています(コーポレートガバナンス・コード原則4-4)。

【補足】

コーポレートガバナンス・コードとは、東京証券取引所が定めた、実効的なコーポレート・ガバナンスの実現に資する主要な原則を取りまとめたコードです。本コードでは、コンプライ・オア・エクスプレイン(原則を実施するか、実施しない場合にはその理由を説明するか)の手法が採用されており、プライム市場・スタンダード市場の上場会社は、コードの全原則について、グロース市場の上場会社は、コードの基本原則について、実施しないものがある場合には、その理由を説明することが求められます。

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