監査役制度

監査役制度について

3.監査役の実務

POINT
監査役監査は、大別すると業務監査と会計監査に分かれ、その具体的な内容は非常に幅広いものです。
監査役の実務は、期初に監査計画を策定し、期中は日常監査を行い、期末に期末監査を実施し、これら年間の監査活動の結果を監査報告として株主に報告する、という流れになります。
監査結果については、監査調書を作成して保管し、監査役間で情報を共有し、必要に応じて取締役(会)や会計監査人等にフィードバックします。
実務の基本スタンスとしては、現場主義、前進守備で早期の対応、信念と誠実さ、自己研鑽などが挙げられます。
監査役監査では、その活動を通じて、会社の透明・公正な意思決定を担保するとともに、会社の迅速・果断な意思決定が可能となる環境整備に努めることも必要です。

(1)監査実務

監査役監査の内容を大別すると、業務監査と会計監査に分かれます。

業務監査では、取締役の職務の執行について、法令・定款に適合しているか、善管注意義務・忠実義務に違反していないかなどを監査します(会381~386)。

また、会計監査では、会計監査人設置会社以外の会社においては、計算関係書類が会社の財産・損益の状況を全ての重要な点において適正に表示しているかどうかなどについて監査しなければなりません(会436、計規122、123)。会計監査人設置会社では、会計監査人の監査の方法と結果が相当であるか、会計監査人の職務の遂行が適正に実施されることを確保するための体制(会計監査人の内部統制)が整備されているかどうかを監査しなければなりません(会444、計規127、128)(新任監査役ガイド(注)Q3)。ここでは監査役と会計監査人との連携が重要となります。
これらを時系列で見ると、おおむね次のような流れになります。

監査計画策定 期中監査(日常監査) 期末監査 監査報告作成 株主総会対応

具体的な監査の方法としては、取締役等との意思疎通・情報収集、会計監査人や内部監査部門等との連携、重要な会議への出席、重要な書類の閲覧、本社・事業所・子会社等の調査などがあります。

監査の結果について、監査調書を作成して保管し(基準60)、記録に残すとともに、監査役会に報告して、監査役間で情報を共有します。

これら1年間の監査活動の集大成として、期末に、事業報告及びその附属明細書、計算関係書類の監査等を経て、監査報告を作成します(会381、施規129、130、計規122、123、新任監査役ガイドQ1)。監査報告には、監査の方法及びその内容、並びに監査の結果としての監査役・監査役会の意見を記載します(施規129、130②、計規122、123②)。また、もし取締役等の職務執行に不正行為や法令・定款に違反する重大な事実があった場合には、その事実を監査報告に記載しなければなりません(施規129三、130②二、基準22)。株主総会では、監査報告の内容について株主から質問を受け、監査役が回答することもあり得ます。

【補足】

会計監査人とは、株式会社の計算関係書類の適正さを監査する機関です。大会社、監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社には会計監査人の設置が義務付けられます。会計監査人には、公認会計士か監査法人しか就任できません。会計監査人設置会社においては、会計監査に係る事項を中心に、監査役(会)・監査委員会・監査等委員会と会計監査人との連携が欠かせません。

内部監査部門については、法律上明確な規定はありませんが、内部統制システムにおけるモニタリング機能を所管する部署であり(基準38、監査役監査実施要領 用語解説Ⅳ-54②)、監査役(会)、監査委員会、監査等委員会と内部監査部門との連携が重要視されています。一般社団法人日本内部監査協会が定める「内部監査基準」の2.2.1では、「内部監査部門は、組織上、最高経営者に帰属し、職務上取締役から指示を受け、同時に、取締役および監査役(会)または監査委員会への報告経路を確保しなければならない」とされており、内部監査部門は監査を行い、その結果を取締役と監査役(会)・監査委員会・監査等委員会双方に報告すること(デュアルレポーティング(コーポレートガバナンス・コード補充原則4-13③))が求められています。

(2)監査結果のフィードバック

監査の結果については、必要に応じて取締役(会)や会計監査人等にフィードバックします。

適切な報告・指摘・助言・勧告、すなわち「フィードバック」は、代表取締役等による問題の認識と改善・対応の促進に寄与するだけでなく、監査役監査の有用性に対する認識を高める結果を生み、「監査役が見ているよ」という抑止・改善効果と、監査役監査の環境の整備に向けての理解を深める効果をもたらします(新任監査役ガイドQ13、Q15)。

(3)迅速・果断な意思決定が可能となる環境整備

監査役監査基準では、「監査役は、会社の透明・公正な意思決定を担保するとともに、会社の迅速・果断な意思決定が可能となる環境整備に努める」ものとしています(基準2)。

コーポレートガバナンス・コードでは、取締役会による役割・責務の一つとして、「経営陣幹部による適切なリスクテイクを支える環境整備を行うこと」が挙げられています(コーポレートガバナンス・コード基本原則4)。

監査役は、取締役会とともに、リスクテイクを支える環境を整備することで、取締役が果断な判断をもって業務執行できるよう、普段から意識することも必要になります。それは、いわば取締役が活躍する舞台を用意することにもなります。

(4)実務における基本スタンス

①現場主義

現場に立脚した監査が大切です。現場の立場に立って物を見、広く丁寧に話を聴くことが欠かせません。当協会内ではよく、「歩き回る監査役」という言葉を用います。

現場の実情を踏まえた意見(助言・勧告等)は、業務執行者に対して説得力があります。

②前進守備で早期の対応

一歩でも二歩でも前へ出てアンテナを張り、早く問題に気付いて、一刻も早く対処するということです。先延ばしにしていると、事態はますます悪化します。

③信念と誠実さ

必要と思うことは言い続けることです。一度や二度言っただけでは、分かってもらえず、1年・2年・3年と言い続けて、やっと分かってもらえることもあります。

④自己研鑽

監査役にとっての自己研鑽は、実務知識の習得、経験・ノウハウの蓄積、外部情報の収集・研究です(新任監査役ガイドQ2)。

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